研究概要 |
1.認知パターンについての理論的研究と面接調査 先行研究を通して、認知パターンが算数・数学の学習の仕方や問題解決への取り組み方に影響を及ぼしていることが明らかになり,認知パターンが算数・数学学習の成否に大きく関わっているという知見を得た。そこで,こうした知見を児童・生徒に対する面接調査で確認するための手法として、学習カウンセリングを考案し,小学生と中学生に対してそれを実践した。その結果、理解のモニターの仕方とか自己制御の仕方といった学習方略に認知パターンが反映していることが分かった。 2.小・中学生に対する学習方略調査 先行研究と学習カウンセリングから得た知見をもとに,認知パターンを反映した26項目から成る数学の学習方略尺度を作成し,中学3年生に対し,数学の学習方略調査を実施した。その結果,26項目中18項目で成績上位・下位群間に有意差が見られ,認知パターンが成績に関係していることが明らかになった。また、男女間に認知パターンの顕著な違いがないことも分かった。 次に,数学の学習方略尺度をもとに,25項目から成る算数の学習方略尺度を作成し,小学6年生に対し,算数の学習方略調査を実施した。この調査でも,25項目中14項目で成績上位・下位群間に有意差が見られた。また,数学の学習方略尺度と算数の学習方略尺度は21の共通の項目を含んでおり,それらの比較分析を通して,小学生と中学生の学習方略に見られる認知パターンの違いについて考察した。その結果,小学生と中学生の学習方略に大きな変化はなく,彼らの認知パターンに顕著な違いがないことが分かった。いかにして認知パターンを改善し,それを学習方略の上達につなげていくかが今後の課題と言えよう。
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