研究課題
基盤研究(B)
気管支喘息における気道上皮の組織破壊・修復・再生の機序解明とリモデリングの制御に関して行った本研究の成果は以下の点である。(1)活性のあるリコンビナントラット好酸球顆粒蛋白質Ear-1及びEar-2の調製を可能にした。(2)ラット好酸球顆粒画分には気道上皮細胞の傷害活性は検出できなかった。(3)HDAC阻害薬は、好酸球の分化を促進した。(4)気道上皮細胞NCI-H292細胞はTPAあるいはTNF-α刺激によりICAM-1を発現した。このICAM-1の発現は、IFN-γ刺激の場合と異なり、NF-κBの活性化を介した反応であり、p44/42MAP kinaseにより抑制的に制御されていた。(5)ヒト気道上皮細胞NCI-H292細胞は恒常的にE-cadherinを発現していたが、BEAS-2B細胞は分化・形態変化に伴ってE-cadherinを発現した。(6)ヒスタミンは気道上皮細胞の増殖、分化に影響しなかった。これらの結果から、気道上皮組織破壊、すなわち気道上皮細胞の傷害は単なる好酸球の脱顆粒反応による顆粒蛋白の放出によるものではなく、気道上皮細胞の接着分子の発現など、好酸球の傷害性を高める他の要因が関与する可能性があることが示唆された。また、この組織破壊を抑制するためには、好酸球の増多を抑制する方法や気道上皮細胞の活性化を抑制することが必要であると考えられる。一方、ヒスタミンはH1受容体を介して気道上皮の接着分子やケモカインの産生を高める作用もあり、組織破壊にも関与している可能性もある。このように、誘導型のヒスタミンも気道リモデリングの促進因子である可能性が示唆された。
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