研究概要 |
本研究では,Hancock(1985,1987,1991)によって提示された金融企業のuser-cost model (UCM)を段階的に発展させ,最終的には次の5つの点を明示的に考慮できるgenerahzed user-revenue model (GURM)を構築した.すなわち,(1)金融企業のリスク回避的な危険態度,(2)金融企業間の戦略的相互依存性,(3)金融資産及び負債市場の情報の非対称性,(4)金融資産や負債の残高変動を考慮した短期利潤(以下準短期利潤)の変動リスク,(5)財政難費用負担リスクを反映した自己資本の影響である.第1段階では,(1)〜(3)を考慮できるようにUCMを発展させたconjectural user-revenue model (CURM)を作成し,UCMから導出されるuser-cost price (UCP)を一般化したものとして,stochastic user-revenue price (SURP)及びconjectural user-revenue price (CURP)を導出した.SURPは(1)を考慮できるようにUCPを拡張したものであり,CURPはそれに加え,(2)及び(3)も考慮できるように発展させたものである.さらに,SURPとCURPの関係からgeneralized Lerner index (GLI)を導出した.GLIは不完全競争度指標であるLerner indexにSURP及びCURPによるこれらの拡張・発展を反映させたものである.第2段階では,consumption-based asset pricing modelのエッセンスを取り入れ,(4)及び(5)を考慮できるようにCURMを発展させ,generalized user-revenue price (GURP)及びextended generalized-Lerner index (EGLI)を導出した.GURPは(4)及び(5)を考慮できるようにSURP及びCURPを拡張したものであり,EGLIはGURPによるこれらの拡張・発展をGLIに反映させたものである.また,EGLIを実際に推計し,バブル崩壊後の中小銀行(地方銀行及び第2地方銀行)では市場成果指標における(プライシング・エラーを考慮した)リスク調整効果の重要性が飛躍的に高まっていること,1995年度以降はそれ以前より,大手銀行及び中小銀行ともに市場競争の程度は増加していることを明らかにした.
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