研究概要 |
教室文化は,国や地域,教育行政,制度,学校などの社会的文化によって規定されるという性質がある。同時にまた,教師と児童・生徒,教材などによって構成するものでもある。このような二重性格が,「教室文化の相補性」である。さらに,このことと関連して,教室文化は,児童・生徒が作るものでありながら,児童・生徒の心や学習を構成する働きをもっている。これを,「教室文化の再帰性」と呼んだ。これらの性格は,文化が本来もっている複雑性に起因しているものである。そのことを教師が理解して,学級づくりや学習指導に生かしていかなければならない。 そのためには,妥当な教室文化は何かが重要である。つまり教室文化は,教室における学習のための「規範」としての側面がある。これを,「教室文化の規範性」と呼んだ。これは,教師の指導や児童・生徒の活動,そしてお互いの関わり方を確立するためのものである。実際の教室文化を分析すると大きく2つの特徴のものに分類できる。機械論的なものと生命論的なものである。 機械論はフランスのデカルト哲学を源流とする思想であり,教育学においてもコメニュウスの教授学であり,心理学的には行動主義である。その特徴は,スモールステップとドリル,動機づけとしての賞賛である。機械論的な教室文化は,伝統的に多くの教室に見られるものであり,現場の教師には慣れ親しんだものである。これに対して,生命的な教室文化は,全体性や多様性の重視,社会的・能動的な学習であり,数学化やオープンな過程としての数学観である。 児童・生徒の全員参加をめざす授業は,まさに生命論的なものであり,これが妥当な教室文化の特徴をもっている。我が国においては,これをめざす実践的な研究は少なくない。重要なことは,機械論的なものを含み込むように,生命論的な教室文化への「文化化」が求められる。そのための授業開発に取り組まねばならない。
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