研究概要 |
今年度は歯性感染症患者10例の排膿を用い、遺伝子法と培養法で検出菌の比較を行った。 唾液の菌叢解析には、基礎疾患がなく口腔内に疾患のない健常者10名の唾液を用いた。歯性感染症患者の排膿は、滅菌スワプもしくは穿刺吸引で膿汁を採取した。培養法には4種の培地(羊血液寒天,BTB,チョコレート寒天,ブルセラ半流動)を使用し、37℃,好気および嫌気条件で培養した。一方、遺伝子法は試料からDNAを抽出し,16S ribosomal RNA遺伝子の一部(約580b p)をPCR法で増幅した。得られたPCR産物を大腸菌にクローニングした後,塩基配列を決定した。決定した配列はBLASTを用いて相同性検索を行い,菌種を同定した。健常者の唾液はすべての被験者においてStreptococcus属が最も多く検出された。優占菌は、個人差はあるもののStreptococcus属,Neisseria属,Actinomyces属,Granulicatella属,Gemella属,Prevotella属であった。排膿では、培養法と遺伝子法とで検出菌が一致したのは10症例中1症例のみであった。培養法では10症例中4症例において起炎菌が同定できなかったが、遺伝子法ではすべての症例において起炎菌が推測できた。遺伝子法は、従来の培養法では検出困難とされるVBN菌も含めた試料中の細菌叢を網羅的にかつ短時間で検出可能であった。 本研究で開発した方法が、口腔内という常在菌が多数存在する中から起炎菌を同定する際に有効であり、口腔常在菌の変動解析に十分使用できることが確認された。生活習慣病のリスクアセスメントツールが確立できた。
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