研究課題
基盤研究(C)
知床半島においてシカ生息密度が異なる3地域を対象とした調査を行い、各地に生息するヒグマの体毛および糞を収集する。糞は遺伝子解析(DNAバーコーディング法)に供試し、シカとヒグマが利用した植物の種類を比較し、植物を巡る競合が起きているか否かを明らかにする。毛は窒素・炭素の安定同位体比解析に供試し、ヒグマによるシカの利用度を調べる。されに体毛中のコルチゾル濃度を測定し、各地におけるヒグマのストレスを評価する。これらのことから、シカの存在がヒグマに正負どちらの影響を与えているのかを明らかにする。
本研究はエゾシカの増加がヒグマの生態に与える正および負の影響を明らかにすることを目的とした。知床半島においてシカ・ヒグマの生息密度が異なる地域(知床岬:両種とも中密度、ルシャ地区:両種とも高密度)を対象として、ヒグマの糞・体毛を回収し、糞分析、DNAバーコーディング法、体毛の安定同位体比解析を用いてヒグマの食性の違いを調べた。この結果、エゾシカが高密度で生息するルシャ地区では、6月のエゾシカの出産期において新生子を高頻度で捕食することができる一方で、ヒグマが本来好む草本を採食する機会は少なく、代替として木本類の若葉を利用するなど、採食生態を変化させることで適応していることが示唆された。
エゾシカは北海道において30年間で急激に生息数を増加させ、その採食行動により森林・草原植生に深刻な悪影響を及ぼしているが、その影響がヒグマという他種にも及ぶことが本研究に初めて明らかになった。本研究結果は、ヒグマとシカの間に「食う/食われる」という単純な関係にとどまらない種間関係が存在していることを示すものであり、今後の野生動物の保護管理の在り方を考える上で重要な学術的/社会的意義を有する。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (22件) (うち国際学会 8件、 招待講演 1件)
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