研究開始時の研究の概要 |
従来 髄芽腫は病理組織学的にいくつかの組織型に分類されてきたが、近年は分子生物学的解析から、遺伝子異常に基づく分類が行われるようになっており、従来の組織型との関連性や、予後を含めた臨床的な特徴が次第に明らかになってきている。
本研究では、1.5T MRI装置でのMRS解析で 髄芽腫の予後とglutamate (Glu) の関連性を述べた先行研究を 3T MRIでの LCModel解析を行うことでより発展させ、Gln→Glu→α-ketoglutarate→2HG の代謝経路を Gln, Glu, 2HGピークを測定することで把握し、病理組織学的分類・分子生物学的分類と予後との関連を検討する。
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研究成果の概要 |
髄芽腫(MB) 10例, MB以外小児後頭蓋窩脳腫瘍(non-MB) 6例 [毛様細胞性星細胞腫 3例, びまん性正中神経膠腫1例, 脈絡叢乳頭腫1例, 退形成性上衣腫1例] の3T磁気共鳴スペクトロスコピーを撮像, LCModelで18種類の代謝物を測定した。 MBで有意にGABA, Glu, GSH, Cho上昇, Tau, Lip+MM, 2HG上昇傾向, Scyllo低下を認めた。神経細胞分化を示し予後良好MB with extensive nodularity 1例はCho/Cr 低下, NAA は保たれていた。本研究でMBでのGABAなど 新しい診断マーカー候補を見い出せた。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
小児脳腫瘍はまれであるが、後頭蓋窩発生の髄芽腫は組織学的悪性で水頭症をきたし、患者の状態が急速に悪化する。鑑別診断として毛様細胞性星細胞腫・上衣腫・脈絡叢乳頭腫など複数の(比較的)良性の腫瘍があり、術前に組織学的診断を推定して治療方策を選択することは臨床的に重要である。形態診断であるMRI画像所見に加え、脳腫瘍の代謝について解析できる磁気共鳴スペクトロスコピー (MRS) は有用な付加的情報を提供してくれる。 3T-MRI臨床機を用いた今回の研究結果は、既報のTau上昇に加え、GABA, Glu, GSH上昇、Syllo 低下など、新たバイオマーカーとして臨床的な有用性を示すことができた。
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