配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2010年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2009年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2008年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
研究概要 |
今回の研究により明らかになった起立時の血圧調節について以下にまとめる。 1.起立により体軸に対する重力の方向が変化することにより,身体の長軸方向の静水圧差が増加する。 2.下半身への血液シフトより,静脈還流量と心拍出量が減少し,血圧が低下する。 3.この血圧低下は,圧受容器で感知され,negative feedback調節機構である圧受容器反射を介して血圧が維持されると考えられていた。 4.しかし,圧受容器反射だけでなく,前庭-血圧反射も重要な役割を担う。姿勢変化に伴う重力方向の変化が前庭系で感知され,前庭-血圧反射を介した血圧上昇が起こる。この反射は,血液シフトによる血圧低下とは無関係に,重力方向の変化のみにより誘起され,次に起こるであろう血圧低下を補正するように働く。すなわち,negative feedforward的調節機構である。 5.以上,起立時の血圧は,血液シフトによる血圧低下と前庭-血圧反射および圧受容器反射による血圧上昇の総和として表すことができる。 正常な状態では,その総和として起立時でも血圧は低下することなしに,維持される。ところが,前庭系は非常に可塑性が強く,日々のphasicな前庭系への入力が減少すると,可塑性が起こり前庭-血圧反射の可塑性が起こり,前庭-血圧反射の調節力が低下し,この反射を介する昇圧が起こらなくなり,起立性低血圧が発生する。この様な状態は,日常の活動が低下した高齢者でみられる。また,宇宙の微小重力環境では前庭系への入力がほとんどなくなることから,同様の前庭-血圧反射の調節力低下が起きると考えられ,宇宙飛行後の起立性低血圧の原因のひとつを考えられる。この様な状態を予防・治療する方法として微弱な電流による前庭系の電気刺激を提案した。
|