研究課題
基盤研究(B)
最近代表者らは、好中球など速い遊走細胞が基質の柔らかい方向に進むrigidity sensingを発見した。本研究ではこの新規rigidity sensingの分子メカニズム解明を目指す。本研究は、代表者らの独自の発見に基づいて立脚され、独創性が高い。光学顕微鏡観察に長けた代表者が生細胞観察を行い、物理系の数理計算に長けた分担者が数理モデル作成とシミュレーションを行う。速いアメーバ細胞の rigidity sensing の分子メカニズム解明は、将来、速く移動するがん細胞や免疫細胞を、薬剤を使わずに、非侵襲な力学的方法で移動制御する医療技術への展開が期待できる。
接着性の細胞は自身が接着している足場の硬さを感知する(rigidity sensing)。代表者らは過去、速いタイプのアメーバが足場の柔らかい方向へ向かう新規の rigidity sensing を発見した。本研究の目的は、この分子メカニズムの解明であり、FアクチンへのミオシンIIの親和性の変化に着目した。本研究において、ミオシンIIを欠損させた細胞性粘菌アメーバはrigidity sensingを示さず、 野生型の細胞の非走化性の運動時の細胞の振る舞いに違いがあること、GFP ミオシンIIは細胞の後端に局在するだけではなく細胞前端にも一時的に集積すること等が明らかになった。
細胞のアメーバ運動は、これまで主に、誘引物質に向かう走化性という見地から研究されてきた。走化性は、誘引物質が遠く離れると細胞が感知できない。 一方、足場には必ず硬さが存在するため、rigidity sensing は常に機能している。rigidity sensingに基づき細胞の移動は、より根源的な移動のメカニズムと言える。医療応用の観点で、本研究の成果はがん細胞や傷修復を担う表皮細胞、好中球など免疫細胞などに対する薬剤を使わない非 侵襲な新規の移動制御技術につながり、がんや創傷の新規治療法研究への発展が期待できる。
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巻: -
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