研究課題/領域番号 |
20K00472
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02040:ヨーロッパ文学関連
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
辻 学 広島大学, 人間社会科学研究科(総), 教授 (50299046)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
|
キーワード | ユダ書簡 / パウロ / 第二ペトロ書簡 / 間テクスト性 / 公同書簡 / ヤコブ書簡 / ディアスポラ・ユダヤ教 / 律法理解 / 第一ペトロ書簡 / 偽名書簡 / 文献依存関係 / 新約聖書 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、新約聖書の中で「公同書簡」と呼ばれる「ヤコブ書簡」、「第一・第二ペトロ書簡」、「ユダ書簡」の4書簡を取り上げ、これらの書簡といわゆるパウロ書簡との文学史的関係を問う。すなわち、これらの書簡の著者たちが、パウロ的キリスト教の流れとどのような歴史的関係にあり、どのような意図をもってこれらの書簡を、最初期キリスト教のリーダーであるヤコブやペトロといった人物の名前を借りて偽作するに至ったのかを明らかにし、初期キリスト教の多様性を描き出す。
|
研究実績の概要 |
分析対象としている新約聖書「公同書簡」のうち今年度は、ユダ書簡および第二ペトロ書簡を取り扱い、両書間の歴史的な関係(第二ペトロ書簡がユダ書簡を資料として用いて書かれたことの確認)および、両書間のパウロ書簡との影響関係について分析した。 第二ペトロ書簡が複数のパウロ書簡(擬似パウロ書簡を含む)の存在と内容を知っていることは、一見して明らかだが(直接の言及がある)、ユダ書簡もまたパウロ書簡を知っており、パウロが説く教説に批判的な姿勢をとっていることを、今回の研究では明らかにした。そのパウロ批判の姿勢が、著者名に「ヤコブの兄弟ユダ」を用い、同じくパウロに対して批判的なヤコブ書簡との連帯性を示すことにつながっている点も、今回の研究で示した事柄である。 第二ペトロ書簡が「ペトロ」の名を冠している理由についての考察も今回進めることができた。第二ペトロ書簡は、パウロ書簡の(著者から見た)誤読に基づく誤った終末理解を矯正する目的を持って書かれているが、単に「誤ったパウロ理解」を正すだけではなく、パウロ書簡そのものにも批判を向けている。その批判の後ろ盾として、最初期キリスト教の権威者ペトロの名前を著者は利用したと考えられる。従来、第二ペトロ書簡が全体としてパウロ書簡に対する批判的な姿勢をとっているという理解は少数の研究者が唱えるにとどまっていたが、今回の分析を通してその認識が正しいことを裏付けるに至った。 また2023年 9月に、従前の研究成果と今回の研究成果を併せ、パウロの影響史を踏まえた学術的注解書『牧会書簡』(新教出版社)を出版した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当研究課題に関する新約聖書のテクスト分析は、第一ペトロ書簡の分析の際に生じた、以前の遅れを取り戻し、おおむね順調に進んではいるが、2023年度に予定していた分析(ユダ書簡・第二ペトロ書簡)が一部残った。この作業を2025年度に仕上げる予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度まで取り扱っていた第一ペトロ書簡については、その分析結果を踏まえて、学術的注解書『第一ペトロ書』として公表すべく、執筆に入った(日本キリスト教団出版局より2025年度に出版予定)。 ユダ書簡・第二ペトロ書簡については、本文の分析が一部残ったので、その部分を2025年度に仕上げた上で、同じように学術的注解書として公表する予定である。 また、公同書簡全体の分析を終えた後、「公同書簡」という一般にはあまり馴染みのない名称の下にまとめられる新約書簡の解説を、今回の研究成果を織り込みつつ執筆することも計画しており、その準備も進める。
|