研究課題/領域番号 |
21K01417
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07020:経済学説および経済思想関連
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
服部 茂幸 同志社大学, 商学部, 教授 (60258192)
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研究分担者 |
塩澤 由典 大阪公立大学, 大学院経済学研究科, 名誉教授 (00109076)
岡 敏弘 京都大学, 公共政策連携研究部, 教授 (00231209)
田淵 太一 同志社大学, 商学部, 教授 (50242136)
平野 嘉孝 富山県立大学, 工学部, 教授 (80305482)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | リカード貿易理論 / 国際価値論 / グローバル・バリュー・チェーン / スラッファ / 貿易理論 / 国際経済学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は第1に、リカードの価値論は生産費価値説であったことを明らかにし、これを「古典派価値論」として現代的な手法で定式化する。「古典派価値論」は主流派ミクロ経済学の需要供給価値説と異なり、価格と数量の独立と数量調整にもとづく理論である。これをもとに、日本の物価変動に大きな影響を与えているのは、為替レートや原油価格の変動など生産費に影響を及ぼす要因であることを示す。第2にリカードの貿易論を「新国際価値論」として現代的に定式化し、これにもとづき、非自発的失業を伴う貿易状況を分析し、貿易が需要の変動を通じて、経済の空洞化などを引き起こし、失業を生み出すことがあるということを明らかにする。
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研究実績の概要 |
2022年7月17日に開催した国際価値論研究会では、塩沢が「国際価値論における経路依存の考え方」を報告した。そこでは、国際貿易下でも国の数だけ異なった労働があるから、技術だけでは価値が決まらない。需要が重要ということは新古典派的になる。粗手に対して、1)認容な国際価値は膨大な数ある、2)面や稜の上では価格による数量調整はない、3)認容な国際価値の集合に対応する生産可能集合が凸である保証はない、4)現実の生産は極大面で行われているとは限らない、5)ある国際価値が成立している時、他の価値に切り替わる理由がないといった点に着目することによって、経路依存という見方に道を開いた。こうした方向にそって理論的に研究を進めている。 またスラッファ価格理論の枠組みを利用し存続可能性概念に基づきながら、数量変化と価格変化の分離の分析可能性を明確にすることを目指した。その成果の一つとして、技術進歩の効果に注目し、特に均一利潤率と、不均一な物的成長の両立を示す数値例を取り上げる論文を執筆した。 新国際価値論を基礎とした、実装分析、学史研究も各自が多様な方向で進めている。 服部は『グローバル金融資本主義の危機』を執筆し、2023年に出版する予定である。それとは別に本を執筆中である。新たな本では新国際価値論に基づき日本の物価変動にとって決定的に重要なのは輸入物価であることを示すと同時に、リフレ派の考える金融政策がインフレ予想を動かし、物価を変動させるという主張には全くエビデンスもないことを明らかにする。 グローバル・バリュー・チェーン研究の成果の1つである付加価値輸出入の概念を、労働とCO2排出に応用し、炭素生産性を労働輸出入とCO2排出輸出入とに関係づける研究を行った。 経済学史に関するところでは、生産費価値説にもとづく国際価値論について、リカードからシーニアへの継承関係を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナのために研究会は思ったほどは開催できなかった。しかし、服部は二冊の本を出版する予定である。その他の研究者も論文や学会発表を重ねている。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画書では、3つの柱を立てた。それは、1)リカードから新古典派までの貿易論の再検討(服部、田淵)、2)リカード価格理論の「現代化」とその実証(服部、塩澤、平野)、3)貿易下の失業理論の再構築とその実証(服部、岡、平野)である。この本心に沿って、予定通り研究を進める。最終的に成果は英文で論文、本として出版する予定である。 1)に関しては、今後もシーニアおよびその後の生産費価値説にもとづく国際価値論の系譜を追跡する。2)に関しては、新国際価値論の理論を基礎として、日本の消費者物価を動かすものが輸入物価やコストであって、マネタリーベースやインフレ予想ではないことを明らかにする。1)と2)に関連するとことでは、スラッファ体系とノイマン体系との関係を検討をさらに続ける。3)に関しては、有効需要概念はどのように扱いうるかについても、時代遅れの機械の取り扱い、ケネーの経済表の分析含意、セー法則の検討、などを通して取り組む。
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