研究課題/領域番号 |
21K04757
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分27010:移動現象および単位操作関連
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
植田 芳昭 摂南大学, 理工学部, 准教授 (00599342)
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研究分担者 |
井口 学 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 客員教授 (00043993)
加藤 健司 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 教授 (10177438)
脇本 辰郎 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (10254385)
中嶋 智也 大阪公立大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (80207787)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 鉄鋼精錬プロセス |
研究開始時の研究の概要 |
鉄鋼プロセスに見られる急激な気液界面現象は,反応速度促進による効率化や,不純物の除去を目的としたガスインジェクション法において,省エネルギー化,高品質化に多大な影響を与える.しかしながら,反応容器内部の流体は高温かつ不透明であることから,反応容器内部の状態を直接観測することは困難である.本研究は,気液界面の変形によって生成されるマイクロバブルの径によって放出される音のスペクトルが異なるという知見に基づき,反応容器内部の高温かつ不透明な流体中で起こるメゾスケールな気液界面現象を,そのときに発せられる放射音を利用して浴外から音響学的に把握するための技術方策を探るものである.
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研究実績の概要 |
溶銑予備処理工程のインジェクション法では,脱硫剤などの粒子群は不活性ガスと共に吹込まれる.そのような粒子は溶銑との濡れが悪いため溶銑内に侵入する際,背後にガスを纏ってしまい,浴内での分散が阻害される.一方,微小気泡が生成・崩壊するとき,化学反応は促進される.このように,溶銑の粒子群が纏う気泡は粒子の浴内分散と化学反応に密接に関係するが,溶銑は不透明であるため浴内での粒子群の分散挙動を直接観察して評価できない.本研究では,反応容器内部で起こる気液界面現象を直接視認すること無しに浴外から音響学的に診断する方策について検討している. 今年度は,粒子が溶銑内に貫入するときその背後に纏う気泡の形状と放射音の関係について検討した.これは流体が水でない場合,物性値の違いにより,粒子に纏う気泡形状が種々に変化することに対応するためである. 球形気泡の振動によって生じる放射音は,レイリー・プレセット方程式によって理論的に検討されている.本研究では,粒子背後に形成される気泡形状はフルード数の値が大きくなるほど鉛直方向に引き伸ばされ球形でなくなるが,気泡分裂の際に生じる放射音の卓越周波数は球形気泡の理論解で説明できることを確認した.さらに,可視化実験により,卓越周波数に対応する放射音は気泡体積の時間変化によって生じていることを明らかにした. 気泡形状は放射音の減衰率に影響し,特に,放射音が高周波数となる条件ではより顕著に表れる.本研究では,先の方程式に対して,細長物体理論で気泡形状を近似し,気泡先端の振動による影響を理論的に検討した.この結果は,実験結果で得られた気泡形状による減衰率の違いを説明できるモデルであることが示唆された. 加えて,気液界面現象を計算する手法として,渦粒子法にペナルティ法の概念を適用したもの構築しており,境界面に回転の影響が加えられた場合のモデル式について検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では,鉄鋼プロセスにおいて,反応容器内部で起こる急激な気液界面現象の状態を,直接視認すること無しに浴外から音響学的に診断するための方策について検討している.今年度の研究では,キャビティ形状が放射音の卓越周波数と減衰率に及ぼす影響について検討した.その結果,キャビティ形状による影響は(特に,高周波数に対して)卓越周波数よりも減衰率に現れることを,実験的および理論的に明らかにした.次年度では,当初は今年度の検討予定であった,流体の密度が音響特性に及ぼす影響について検討する予定である.他方,数値シミュレーションに関する研究では,渦粒子法にペナルティ法の概念を適用した手法において,境界面で回転成分がある場合について検討し知見を得た.この結果は,気液界面現象を数値的に扱う上で有用であると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,当初予定では今年度行う予定であった,液体密度の影響について検討する予定である.実験の初期段階では,塩水で液体の比重を調整し音響特性に関する物理的知見を得る予定であるが,最終的には実際の溶鋼を見据えて,液体金属での実験までこぎつけることを目指している. なお,今年度得られた知見は,次年度,追加実験によるデータと併せて、発表予定である.
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