研究課題
若手研究
ゲノム異常に伴う遺伝子発現過剰は、リンパ腫の発症や進展に直接的に関与する。近年、染色体8q24領域において、MYC近傍に座位するPVT1が新たながん遺伝子として着目されている。PVT1は、環状RNAを形成し、固形がんの薬剤感受性に関与する。研究代表者は、PVT1過剰発現を示したB細胞リンパ腫の細胞株を樹立し、PVT1がビンクリスチン耐性に関与することを見出した。そこで、PVT1がリンパ腫の病態に関わり、薬剤耐性や予後に関連することを解明する。本研究により、PVT1高発現を認めるB細胞リンパ腫の新たな分子病態の解明と、PVT1を標的とした新しい治療の開発が期待できる。
染色体8q24(以下、8q24)は増幅や染色体14q32との転座により、8q24に座位する遺伝子、とりわけMYCを過剰発現し、悪性化に密接に関わる。血液腫瘍では、MYCの過剰発現は特にバーキットリンパ腫の病態形成、びまん性大細胞性B細胞型リンパ腫(DLBCL)や骨髄腫の予後に関連する。最近、8q24との相互転座をもつ骨髄腫の患者や細胞株において転座部位が、MYCではなくMYC近傍にあるPVT1であることが見出された。PVT1は8q24に座位し、MYCの57kb下流に位置する全長200kbを超えるnon-protein coding geneである。さまざまながん腫の病態に関わるPVT1や環状PVT1の詳細な分子機序は依然として不明である。研究代表者は、8q24領域のゲノム増幅とPVT1の高発現をもつDLBCL症例からリンパ腫細胞株AMU-ML2を樹立した(Mizuno et al, FEBS open bio, 2018)。アレイCGH解析により、そのHSRはMYCとPVT1の両遺伝子を含んでいた。また、AMU-ML2は、8q24転座を伴う他のB細胞リンパ腫細胞株と比べてPVT1や環状PVT1の高発現を認めた。さらに、薬剤感受性試験ではAMU-ML2において顕著なビンクリスチン感受性の低下を認め、PVT1に加え環状PVT1がこの耐性機序に関わる可能性が示唆された。2021年度より、DLBCL患者検体におけるMYC 、PVT1や環状PVT1の発現をコントロール検体と比較し解析を行っている。DLBCLは低悪性度B細胞リンパ腫やその他のリンパ腫に比べ、MYCや環状PVT1は高発現を示す傾向であったが、PVT1の発現の上昇は認めていない。
3: やや遅れている
リンパ腫におけるMYC 、PVT1や環状PVT1の発現解析に着手し、その他疾患との比較などは行った。一方、解析症例数が十分に進まないことや、環状PVT1のノックダウンや遺伝子導入による薬剤感受性検討などにはまだ着手できていない。
解析結果を基に診断・予後のバイオマーカーとなるかを検証する。PVT1や環状PVT1のCRISPR/Cas9システムによるノックダウンやレンチウイルスベクター用いたトランスフェクションにより遺伝子導入を行い、薬剤感受性や薬剤耐性について解析を進める。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (14件) (うち査読あり 14件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件)
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