研究課題/領域番号 |
21K18305
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分61:人間情報学およびその関連分野
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研究機関 | 愛知産業大学 (2023) 静岡大学 (2021-2022) |
研究代表者 |
西村 雅史 愛知産業大学, 造形学部, 教授 (60740363)
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研究分担者 |
黒岩 眞吾 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (20333510)
森野 智子 静岡県立大学短期大学部, 短期大学部, 講師 (20582703)
津賀 一弘 広島大学, 医系科学研究科(歯), 教授 (60217289)
合田 敏尚 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 特任教授 (70195923)
西田 昌史 静岡大学, 情報学部, 准教授 (80361442)
吉川 峰加 広島大学, 医系科学研究科(歯), 准教授 (00444688)
大須賀 智子 国立情報学研究所, データセット共同利用研究開発センター, 特任研究員 (10435505)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
25,350千円 (直接経費: 19,500千円、間接経費: 5,850千円)
2024年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2023年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2022年度: 8,710千円 (直接経費: 6,700千円、間接経費: 2,010千円)
2021年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
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キーワード | 食行動 / 口腔機能 / 嚥下機能 / 自動行動認識 / 食行動データベース |
研究開始時の研究の概要 |
「食べること」は生きる上での基本行動の一つであり,その質の維持・向上はあらゆる人の心身の健康を維持・増進する上で非常に重要な要素である.1) 食物を口に運び,2) 様々な位置で咀嚼し,3) 順次食塊を形成し,4) 食道へ送り込むという一連の食行動を,音や加速度,画像といった多元的なセンサー情報に基づく自動認識と,人手による修正作業によって可視化する.これによって,食行動を保健・医療,情報工学の両面から分析・評価できる研究基盤を構築するとともに,その学術的な有効性を示す.なお,本研究で構築する食行動データベースや関連ツール群は食行動に関する活発な研究を促すための研究基盤として公開する.
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研究実績の概要 |
本研究では人が食物を認識し,口に運ぶまでの食行動に加え,口腔内で食物を咀嚼し,食塊を形成して嚥下するまでの一連の食行動を多元的なセンサー情報とともにデータベース化し,情報工学,保健・医療の両面で活用できるものにすることを目指している.本年度は高齢者データの拡充を目標とし,シルバー人材センターに加え,近隣の医療機関,社会福祉協議会など関係各方面の協力も得ながら広く高齢者のリクルーティング活動を行った.結果として,健常と思われる高齢者50名以上から,食行動データ(3方向からの動画,嚥下や咀嚼に関する6chの収録音,両手と頭の計3箇所での加速度・角速度,摂取食物の重量変化など)を収録した.行動に対する詳細なラベルはまだ付与できていないが,医学的な手法で測定した嚥下機能及び口腔機能に関する被験者属性を中心に,昨年度収録した若年者データとの比較を実施し,咀嚼回数や嚥下時間に関して有意な差を確認した.また,今回収集した健常高齢者の嚥下音を活用して嚥下障害高齢者の嚥下音との違いを可視化する方法を検討し,その可能性を明らかにすることができた. 一方,データベース化のために必要となる詳細行動のアノテーション作業を効率化する目的に加え,本データセットが行動認識モデルの学習用データとしても有用であることを検証するため,画像,加速度・角速度情報に基づく食行動認識及び,音情報に基づく口腔内行動認識の性能改善にも引き続き取り組んだ.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
情報工学,保健・医療の両面で活用可能な食行動データベースを構築できるよう,メンバー全員で繰り返し議論を行った結果,高齢者を含む被験者の負担にも考慮しつつ,多様な食材や摂取方法を広くカバーできるような収集手順のデザインができたと考えている.この手順に従い,昨年度の若年者に続き,本年度は健常高齢者のデータ収集を実施したが,これについてもほぼ予定通り順調に進めることができた. 一方で,画像ベースの食行動の分節化については必要以上に細かい行動を定義していたために,結果として人手によるアノテーション作業に想定外の時間がかかり,プロジェクト全体のスケジュールにも影響が出ることが判明した.このため,行動クラスの分類を見直した上で改めてアノテーション作業を再開している. また,研究代表者の定年退職に伴う職場変更に伴い,収録および作業環境の再整備が必要になったことに加え,作業担当者についても入れ替えが必要となり,作業の遅れにつながっている.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに若年者50名以上,健常高齢者50名以上に対し,医学的な手法に基づいて嚥下機能及び口腔機能等を測定するとともに,様々な食材,様々な形態での食行動データを収集し終えた.ただ,収録後のチェックにおいて,何らかの不備(センサの装着ミスや雑音の重畳等)が発見されたデータが20%以上あったため,これらの不備データを置き換える目的で追加のデータ収集を実施し,これを以て本データセットの収録作業を本年度中に終了する予定である. 一方,アノテーション作業については当初計画よりも遅れているが,これまでに構築した認識モデルによる行動ラベルの自動付与結果を初期値とし,これに対して人手による確認・修正を行うことで,作業の効率化を図る.なお,既に一部のデータを用いてこの手順の検証を行い,作業効率の大幅な改善につながることを確認している. 若年者,高齢者,それぞれの食行動に詳細なラベルを付与したデータは,人が食物を認識し,口に運ぶまでの行動に加え,口腔内で食物を咀嚼し,食塊を形成して嚥下するまでの一連の食行動を自動認識するための学習データとなるだけでなく,高齢者に見られる様々な機能低下(フレイル)を見出すための基礎データとしても有効である.この点については特に咀嚼,嚥下それぞれの機能低下に焦点を当てて,今後も引き続き検証を行う.
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