研究課題/領域番号 |
23K22321
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補助金の研究課題番号 |
22H01050 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09070:教育工学関連
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
松田 岳士 東京都立大学, 大学教育センター, 教授 (90406835)
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研究分担者 |
近藤 伸彦 東京都立大学, 大学教育センター, 准教授 (10534612)
岡田 有司 東京都立大学, 大学教育センター, 准教授 (10584071)
重田 勝介 北海道大学, 情報基盤センター, 教授 (40451900)
渡辺 雄貴 東京理科大学, 教育支援機構, 教授 (50570090)
加藤 浩 放送大学, 教養学部, 教授 (80332146)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2024年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 7,540千円 (直接経費: 5,800千円、間接経費: 1,740千円)
2022年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
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キーワード | Self-Directed Learning / 教学IRデータ / メタ認知 / 学習支援システム / 学びのトランジション / 自己主導学習レディネス / モニタリング / 学習プランニング / 授業外学習 / 自己主導学習 / データ可視化 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は,個々の学生の学びに関するデータを対象とした分析によって自己主導学習(Self-Directed Learning,以下SDL)の遂行能力を高める情報を抽出し,学生にフィードバックする学習支援システムを開発,評価することである.同システムに実装される主な機能として,学習状況把握機能,可処分時間管理機能,SDLスキル習得支援機能を予定している.また,同システムは,学生自身の学びに関するデータを表示するだけでなく,同システムから得られるデータを解析することによってSDLの観点から個々の学生がよりよく学ぶために必要な具体的な改善案や可処分時間の配分を提案する.
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研究実績の概要 |
2023年度は,前年度に実施したシステム実証評価の成果をまとめた論文を発表するとともに,それを反映してシステムを改善した.また,翌2024年度に予定している2回目のシステム実証評価の計画を立案した.これらに関連してシステム使用者自身らの学習の可視化方法や自分自身以外の学生の学習状況を知る機能に関する先行研究なども調査し,効果予測なども行った. まず,システムの実証評価では,113名の学生が自分自身のすべての学習状況を記録し可視化するシステムを実際に使用した評価データを用いて,評価参加者の自己主導学習レディネスがシステムの継続的な使用に与える影響を考察した.4大学の1年生から3年生が参加した実証評価における使用継続状況を決定木分析した結果から,自己主導学習レディネスの構成因子のうち,自己責任感が強く,自己効力感も高い学生の中に,外部からの介入がなくても長期間継続して使用する者の割合が高いことが示された.また,様々な状況で効果的な学習ができると考えている程度が高い学生ほどシステムを学習プランニングのツールとみなしておらず,学習記録のモニタリングシステムとして使用する傾向にあった. これを受けて,大学の授業のように毎週同じ時間帯の学習予定を一括登録できる機能と,システムに一定期間アクセスがないと利用を促すメッセージを送付する機能を追加開発・実装し,学生自身にこれら機能を使用するかどうかを選択させることとした.2回目の評価は,試用期間を1回目と同じ13週間に設定して,同じ4大学から参加学生を募集して実施する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,開始時点(2022年度)で3年の期間を設け,おおむね1年の期間に対応する3つのフェーズで活動する予定であった.研究の第一段階は「調査フェーズ」であり,開発の前提となるデータ収集期であった.次の第二段階では,システムのモックアップを開発し,インターフェースや学生の反応を評価する.このフェーズを「形成的評価フェーズ」と呼び,予定通り2023年度までに完了し,論文化も達成した.したがって,進捗状況は予定通り順調に進捗しており,2024年度は,最終段階である「最終開発フェーズ」となる. 2023年度までの研究はシステムに入力された学習内容の詳細には踏み込まず,自己主導学習レディネスとシステムの使用状況の関係に注目したものであった.つまり,これまでの研究では「大学生は何をどのように学んでいるか」までは対象にしていなかった.形成的評価フェーズまでの研究は,その前段階として学習予定や学習状況を記録できるシステムが与えられた場合,大学生が「どのように使用するか」であり,システム利用状況を検証し,今後予定している追加開発の方向性や支援方法を探る研究であった.さらに,システム試用者への足場架け(例えば有効活用のためのヒントや入力忘れの警告など)もほとんど提供されていなかった. これらを勘案すると,2023年度までのシステムには自己主導学習を促進する効果自体はほとんどなかったうえ,自己主導学習のレディネスと学習内容との関係性の考察にも踏み込んでいなかったと考えられるので,最終開発フェーズでは学習内容,特に大学の授業に関係のない学習と自己主導学習レディネスの構成因子の関係にも着目し,新規に開発した機能の使用状況や効果も検証する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は本科研の最終年度である.したがって,追加機能を実装したシステムの効果を実証するため,再度実証評価を行い,詳細なデータ収集を通して,システム使用の効果を分析し,残された課題を整理して最終成果として発表する.その際,2023年度に想定した以下の仮説を検証する. 仮説1.自己責任感が強く,自己効力感も高い学生の中に,外部からの介入がなくてもシステムを長期間継続して使用する者の割合が高い.仮説2.仮説1であげた自己責任感と自己効力感が高いグループの中でも自己コントロールに自信がない場合,介入がなくても非常に高い確率で継続使用する.仮説3.自己責任感が強いにも関わらず,自己効力感と自己コントロール力が低いと考えている学生が多く存在し,その中で継続する確率を左右するのは創造性(または好奇心)が高いかどうかである.仮説4.自己効力感が高く,様々な状況で効果的な学習ができると考えている程度が高い学生ほどシステムを学習プランニングのツールとみなしておらず,学習記録のモニタリングシステムとして使用する傾向にある. これらの仮説は,より多数であるばかりでなく,より多様な学生が参加する実証研究を通じて,サンプリングができるだけ問題にならないよう配慮して検証する.また,2022年度の参加者には問わなかった,所属学部・研究協力の動機・スケジューラシステムや学習記録アプリの使用経験や使用時の感想などについてもデータを収集し,試用前後の自己主導学習のレディネスの変化自体にも着目して,より精緻にシステム使用の影響を確認する.
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