研究分担者 |
江上 博登 佐賀医科大学, 医学部, 助手 (30176755)
本田 千穂 香川医科大学, 医学部附属病院, 医員
三野 章呉 香川医科大学, 医学部, 助手 (40174106)
吉岡 純二 香川医科大学, 医学部, 助手 (40166913)
植田 清隆 香川医科大学, 医学部附属病院, 講師 (50144738)
大本 堯史 香川医科大学, 医学部, 教授 (60032900)
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研究概要 |
原発性脳腫瘍の中核をなすグリオーマにおいて, どのようながん遺伝子(oncogene)が発現されているかを深る目的で, 数種の既知がん遺伝子産物に対する特異モノクローナル抗体を用いた. flow cytometryにより培養ヒトグリオーマ細胞の探索を試みた. その結果, ヒトグリオーマ(KY, KC, KH)細胞では抗pp60^<src>抗体および抗ECTF-R抗体に対してコントロールを比べ, 細胞数においていずれも30%以上の差が認められたことより, 各細胞株間で程度の差はあるにしても, pp60^<src>およびEGF-Rの発現があることが判明した. さらに118MG細胞では抗pp60^<src>抗体に対してはコントロールと比べ細胞数において82.3%の差があり, pp60^<src>が比較的強く発現されていることが示唆された. しかし, 抗EGF-R抗体に対する反応は陰性と思われた. 一方, 抗p21ras抗体に対しては, KY, KC, KH, 118MGいずれの細胞株もコントロールと比べ差は認められなかった. 次にKY細胞にforskclin(FKN)を作用させると, KY細胞におけるpp60^<src>ならびにEGF-Rの発現はいずれも有意に抑制された. さらにprcstaglandinD_2, J_2は細胞増殖抑制効果をもたらす濃度でpp60^<src>およびEGF-R発現の低下を示した. こうした作用はJ2の方でより顕著であった. 次にCキナーゼ阻害剤であるH-7処置によりpp60^<src>の発現の低下と, EGF-Rの軽度増強が観察された. 以上の我々の得た検索結果およびこれまでの報告から, グリオーマ細胞に発現されるがん遺伝子産物は多様であるといえる. このことは個々のグリオーマの発生, 増殖, 分化に関係すると考えられるがん遺伝子は一様ではなく, 同じグリオーマの範疇にあっても, 個々の症例で異った機序により癌化が惹起されていることを推測させる.
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