研究概要 |
1.本研究ではテフラの同定・対比のための示標として, 斑晶鉱物組成および強磁性鉱物の熱磁気特性を利用した. 熱磁気特性の測定に際して, 既存の磁気天秤をコンピュータにより制御するよう改良した. この結果, 自動測定自動記録が可能となり測定はもちろんデータの処理・解析・保存もきわめて容易におこなえるようになった. 2.中国・近畿地方で分布が報告されている九州の火山起源の広域テフラ(Ah,AT,Aso-4,K-Tz)の熱磁気特性は, ATを除けば山陰地域の火山起源のものと明らかに異なっている. とくに, 前者に含まれる強磁性鉱物の主相のキュリーポイントが400°C以下であるのに対して, 後者では430°C以上と高い. 島根県赤来町安江では, この相異をもとに三瓶山テフラに混在するAso-4火山灰が検出され, 熱磁気特性によるテフラの同定が有効であることが実証された. 3.三瓶火山起源の広域テフラである木次軽石(K_3)は, 斑晶鉱物組成・熱磁気特性ともに特異であり, 示標層としての存在価値が高い. 4.本研究で特性や層序・分布が明らかになり新たに命名されたテフラは, 大山火山起源の荒田軽石2(DAP_2), 荒田軽石1(DAP_1), 蒜山原軽石(HiP), 奥津軽石(DOP)である. いずれも大山南東域に分布する降下軽石層であるが, このうちDOPは層厚が2m以上と厚くより東方に広域にひろがるものと考えられる. 5.DOPおよび大山最下部火山灰層上部のh_1軽石についてジルコンによるフィッショントラック年代測定を依頼した結果, それぞれ86,000±7,000年, 81,000±7,000年という値が得られた. これまで最下部火山灰層は風化による赤色化が著しいことから最終間氷期以前の噴出物と考えられてきたが, すくなくとも, その上部は最終氷期にかかる可能性が強くなった.
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