研究概要 |
超高真空下で通電加熱(〜1100℃)により清浄化したB-SiC表面(C2×2LEED像は, CKLL/SiLVV〜0.9のオージェ信号を与える. これはCでターミネイトされたB-SiC(100)表面で期待されるオージェ信号強度比である. このときSiLVV,CKLLとも低運動エネルギー側に特徴的な微細構造を示し, それらの二次微分スペクトルの比較から, 微細構造はバルクおよび表面プラズモン損失によるものであることをはじめて明らかにした. C2×2表面に室温で鉄を数原子層蒸着すればSiLVVおよびCKLLスペクトルに僅かな変化があらわれる. コンピュータシミュレーションによりその変化は鉄シリサイドおよび鉄カーバイドの生成によるものであることが明らかとなった. 反応は極く僅かではあるが室温でも鉄とB-SiCが反応しシリサイドとカーバイドが生成することがはじめて明らかとなった. 室温で多量の鉄を蒸着し, 完全にSiCオージェシグナルが鉄で覆われた後, 試料を250℃で30分間真空中アニールすればまず炭素が表面にあられる. そのCKLL線形は, Fe_3C標準スペクトルとほぼ一致する. さらに540℃で30分間アニールすればカーバイド強度も増加するが, Si強度はそれ以上に急激に増加する. SiLVV線形は単体Siのそれと一致する. Ar^+イオンスパッタで表面を少し削れば, Si, 炭素とも急激に減少することからそれらは, 粒界拡散によって表面偏析したものであることが明らかとなった. 膜の内部ではSi:C:Feの比はおよそ1:2.5:25で, SiLVVとCKLLの線形はそれぞれFeSi_2およびFe_3Cの特徴を示す. また界面では単体Siのパイルアップが顕著に認められた. Fe/B-SiC反応については, 500℃で全ての鉄が完全に反応するという報告と全く反応しないとする報告があるが本結果はそれらの中間にあたる. 反応の進行の程度は試料表面の状態に強く依存するように思われる.
|