本研究は、過去の認知症ケアのあり方が、どのように現在の「新しい認知症ケア」を形成してきたのか、その歴史を分析することを目的とする。日本の認知症介護は、特に 2000 年代以降、いわゆる「新しい認知症ケア」の理念下にあるとされる。「新しい認知症ケア」とは、認知症患者本人に残された「意思」を徹底的に尊重し、「その人らしさ」を守ることに価値を見出す介護をさす。しかし「新しい認知症ケア」の理念が、いったいどのように日本で普及していったのかは、これまで十分に検討されていなかった。 そこで本研究は、介護家族の語りや支援団体が残した文書資料を収集し、認知症ケアの理念がどのように転換したのか、詳細に検討した。
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