本研究は、幼児が他者に向けて理解可能な社会的行為を産出し、それに応じる行為の連鎖を生み出すことがいかにして達成されているのかを、幼児と養育者の自然発生的相互行為場面の綿密な質的分析を通して明らかにすることを目的とした。幼児による、言語形式上は必ずしも「完全」ではない発話であるが故にその発話を通して為される行為の理解可能性が焦点となる3つの具体的現象の詳細な分析を通して、それらの発話が実際には極めて豊かな相互行為環境に埋め込まれており、それを踏まえて産出されているものであること、また、それを適切に参照(分析)する受け手(養育者)との間での相互理解の確立が協同的に実現されていることを明らかにした。
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