研究成果の概要 |
本研究の目的は, アコヤガイの大量死を引き起こす軟体部萎縮症の原因究明と, 殻黒変病の原因細菌Tenacibaculum sp. Pbs-1株の特異検出法の開発である。以下の成果が得られた。 1. 軟体部萎縮症個体からVibrio sp. MA3株を単離し, 人為的に感染させて軟体部萎縮症を再現した。2. MA3株から溶血タンパク質Vhe1を精製し, 特性解析した。3. MA3株の感染で心筋のびまん的な変性・壊死が起こり, 心臓の機能不全と, それに伴う出入鰓血管を介した循環障害が起こっていた。4. 殻黒変病の原因細菌Tenacibaculum sp. Pbs-1株のLAMP法を開発した。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
日本の養殖アコヤ真珠は, 世界的に非常に評価が高く, 日本の水産物年間輸出額の11% (約330億円) を超える重要な輸出産業となっている。しかし近年, 母貝の殻内側が著しく黒変し, 低品質の真珠形成や死亡を引き起こす‘殻黒変病’と, 外套膜が極端に委縮し死亡する‘軟体部萎縮症’が全国の真珠養殖場で大きな問題となっている。これらの疾病の全容解明は, 緊急性を要し, 日本が誇る真珠養殖産業の持続・発展に不可欠の課題である。本研究成果は, その解決に向けた第一歩であり, 学術的・社会的意義は高いと考えられる。
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