アトロプ異性型軸不斉分子は単結合のねじれおよび回転束縛に基づくキラル化合物であり,不斉触媒,不斉配位子,不斉識別剤として汎用される最も重要なキラル化合物群の一つである.これまで,安定なアトロプ異性構造を有する(単結合の回転束縛を生じる)ためには,単結合(不斉軸)周りに一定以上の立体的嵩高さを有する置換基が必要と考えられてきた.申請者は,不斉軸周りにフッ素原子や重水素原子等極小置換基を有する炭素-窒素軸不斉型アトロプ異性分子の創製に成功した.また,関連化合物として安定な同位体アトロプ異性分子を合成し,さらに,置換基の電子効果と炭素-窒素軸の回転障壁との相関性も明らかとした.
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