フェミニズムの鼻祖とされるウルストンクラフトのテクストから、「進歩」を共通項として成立する国家と女性の類似性を抽出して、その意味と相互の影響関係を分析した。 未開状態から文明社会への「進歩」は、豊かで不安のない生活と高度な精神活動による文化を生み出す。しかし、『北欧紀行』に見られるように、スウェーデンやデンマークの自然と接したことで、彼女は、単純な進歩史観には疑問を呈するようになる。 彼女の逡巡は、近代国家の成立と自らの女性としての表象とを重ね合わせつつ、「進歩」の功罪を問い直す懐の深い思索を重ねたことの証であり、ラディカルな女権論者としてのウルストンクラフト像の別な側面を示している。
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