研究課題/領域番号 |
20H02984
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39040:植物保護科学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
吉岡 博文 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (30240245)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
18,070千円 (直接経費: 13,900千円、間接経費: 4,170千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2022年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2021年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2020年度: 8,190千円 (直接経費: 6,300千円、間接経費: 1,890千円)
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キーワード | 活性酸素 / ROSセンサー / ROSセンサータンパク質 / 植物免疫 / 活性酸素種 |
研究開始時の研究の概要 |
植物免疫応答では、原形質膜に存在するNADPHオキシダーゼによって2相性のROSバーストが誘導される。ROSバーストは第一では弱く、第二ではより激しく起こり、免疫細胞死に重要な役割を果たす。ROSはそのセンサータンパク質を酸化することによって構造を変化させ、様々な細胞応答を引き起こすと考えられている。しかし、植物免疫応答に関与するROSセンサーについては未開拓である。本研究では、植物免疫応答の鍵を握るROSセンサータンパク質を網羅的に探索し、機能を明らかにすることでROSによる免疫統御機構を明らかにすることを目的とする。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、植物免疫応答の鍵を握るROSセンサータンパク質を網羅的に探索し、機能を調べることによってROSによる免疫統御機構を明らかにすることである。ROSは、世界中で防御応答のマーカーとして観察されているが、その作用機構について説明することができない。ROSであるH2O2は、そのセンサータンパク質のシステインのチオール基 (-SH) を酸化し (-SOH;スルフェン酸)、分子内または分子間でジスルフィド結合を形成する。あるいは、スルフェン酸が還元型グルタチオン (GSH) と反応してS-グルタチオン化 (-S-SG) することによってROSセンサータンパク質の構造を変化させ、様々な細胞応答を引き起こすことが知られている。 これまでに、PTIおよびETIにおいてスルフェニル化されると予想される多くのタンパク質を得ることができた。これらの中で、カルシウムチャネルと予想される候補タンパク質を大腸菌で発現させ、リコンビナントタンパク質を得た。リコンビナントタンパク質を過酸化水素によって酸化させ、スルフェン酸と特異的に結合するdimedoneを加えた後、抗システイン-dimedone抗体を用いてウエスタン解析した。その結果、候補タンパク質がin vitroでスルフェニル化されることを確認した。本年度は、さらに、標的システインをアラニンに置換した変異リコンビナントタンパク質は、スルフェニル化されないことを確認した。 ベンサミアナタバコ葉において候補遺伝子を抑制し、病原菌に対する影響を調べた。その結果、ジャガイモ疫病菌および灰色かび病菌が著しく感染するようになった。さらに、ベンサミアナタバコ葉に発現させ、病害シグナルを与えた後に免疫沈降することで標的タンパク質を回収し、in vivoでスルフェニル化されることを確かめた。しかし、現時点ではLCMS/MS解析の結果は得られていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ROSは、植物免疫応答を局部的、全身的あるいはPTIおよびETIにおいて重要なシグナル分子であると認識され、世界中で防御応答のマーカーとして観察されているが、その作用機構について説明することができない。ROSであるH2O2は、そのセンサータンパク質のシステインのチオール基 (-SH) を酸化し (-SOH;スルフェン酸)、分子内または分子間でジスルフィド結合 (-S-S-) を形成する。あるいは、スルフェン酸が還元型グルタチオン (GSH) と反応してS-グルタチオン化 (-S-SG) することによってROSセンサータンパク質の構造を変化させ、様々な細胞応答を引き起こすことが知られている。 これまでに、YAP1を用いてROSセンサーを網羅的に探索し、PTIおよびETIにおいてスルフェニル化されると予想される多くのタンパク質を得ることができた。これらの中で、カルシウムチャネルと予想される候補タンパク質を大腸菌で発現させ、リコンビナントタンパク質を得た。リコンビナントタンパク質を過酸化水素によって酸化させ、スルフェン酸と特異的に結合するdimedoneを加えた後、抗システイン-dimedone抗体を用いてウエスタン解析した。その結果、候補タンパク質がin vitroでスルフェニル化されることを確認した。 本年度は、ベンサミアナタバコ葉において候補遺伝子を抑制し、病原菌に対する影響を調べた。その結果、ジャガイモ疫病菌および灰色かび病菌が著しく感染することが確かめられた。さらに、候補遺伝子を抑制したベンサミアナタバコにおいて、スルフェニル化されるシステインを置換した変異候補遺伝子では、灰色かび病菌に対する抵抗性を相補することができなかった。この結果は、標的システインが抵抗性発現において重要な役割を果たすことを示している。以上のように、おおむね予定通り研究が進展した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、カルシウムチャネルと予想される候補遺伝子のコンビナントタンパク質を過酸化水素によって酸化させ、スルフェン酸と特異的に結合するdimedoneを加えた後、抗システイン-dimedone抗体を用いてウエスタン解析した。その結果、候補タンパク質がin vitroでスルフェニル化されることを確認した。さらに、得られたROSセンサーのスルフェニル化の機能を解析する目的で、dimedoneより強くスルフェニル化されたシステインと結合するBTD (benzothiazine-based probe) で化学ラベルし、コンビナントタンパク質が過酸化水素によって酸化されることを確認した。また、ベンサミアナタバコ葉に候補遺伝子を発現させ、病害シグナルを与えた後に免疫沈降することで標的タンパク質を回収し、in vivoでスルフェニル化されることを確かめた。しかし、現時点ではLCMS/MS解析の結果は得られていない。 本年度は、dimedoneに比べて100倍以上スルフェニル化されたシステインとの反応性が高いBTDを用いてin vivoにおける候補タンパク質のスルフェニル化を調べる。タグを付加した候補遺伝子をベンサミアナタバコ葉で発現させ、病害シグナルを与えた後に免疫沈降することで標的タンパク質を回収し、in vivoでスルフェニル化されることを確かめる予定である。
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