研究課題/領域番号 |
20H04306
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分63010:環境動態解析関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
吉田 聡 京都大学, 防災研究所, 准教授 (90392969)
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研究分担者 |
立花 義裕 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (10276785)
小松 幸生 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (30371834)
山本 雄平 千葉大学, 環境リモートセンシング研究センター, 特任助教 (30845102)
藤田 実季子 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(大気海洋相互作用研究センター), グループリーダー (50426293)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
17,940千円 (直接経費: 13,800千円、間接経費: 4,140千円)
2022年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2021年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2020年度: 9,490千円 (直接経費: 7,300千円、間接経費: 2,190千円)
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キーワード | 可降水量 / 水蒸気 / 大気海洋相互作用 / 衛星観測 / リモートセンシング / 水蒸気観測 / マイクロ波放射計 / 雲カメラ / GNSS / 船舶観測 / ひまわり8号 / 海上水蒸気量 |
研究開始時の研究の概要 |
日本に豪雨をもたらす水蒸気は熱帯・亜熱帯の暖かい海から蒸発し、陸上へ流入する。しかし、極軌道衛星搭載マイクロ波放射計による鉛直積算水蒸気量(可降水量)の1日2回の観測では数時間で数kmの範囲に局所的な豪雨をもたらす降雨帯への水蒸気流入を把握することはできない。本研究では、船舶に搭載したGNSS受信機及び雲カメラ付きマイクロ波放射計と、新世代静止気象衛星ひまわり8号の多チャンネル熱赤外センサとの高頻度同時観測を元にした、海上可降水量の微細構造を水平解像度2kmかつ10分毎にリアルタイム推定する高解像度海上可降水量マップ作製手法を開発し、豪雨災害予測の定量化と早期警戒情報の高精度化に貢献する。
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研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、複数の船舶を用いた海洋上の水蒸気観測と、ひまわり8号観測から可降水量を推定する手法の開発を進めた。船舶観測では、三重大学の「勢水丸」と東海大学の「望星丸」には通年、海洋研究開発機構の「みらい」には2021年8月から2022年1月まで、「新青丸」には2021年5月から6月に、水産大学校の「耕洋丸」には2022年1月にマイクロ波放射計・雲カメラ・GNSS受信機を設置し、日本沿岸、熱帯北太平洋、中緯度北太平洋、北極海での海洋上の水蒸気・雲の連続観測を実施した。「みらい」、「新青丸」、「耕洋丸」では、GPSゾンデによる水蒸気鉛直プロファイル観測やCTD・XCTDによる海洋鉛直プロファイルも同時に実施した。これにより、マイクロ波放射計で推定する水蒸気量の精度検証と誤差軽減及び、ひまわり8号による可降水量推定の学習に必要な海洋上での水蒸気データ及び、海洋上の水蒸気分布を左右する海水温データを高密度で取得することに成功した。また、晴天時のラジオゾンデ観測データベースSeaBorと放射モデルMODTRAN6を用いて、ひまわり8号の熱赤外・水蒸気バンドをシミュレートし、このデータを教師データとした機械学習可降水量推定モデルのプロトタイプを作成した。さらに、2020年8月から京都大学防災研究所潮岬風力実験所にて連続観測しているマイクロ波放射計・雲カメラ観測から、降水直前1時間の水蒸気量の変化を解析し、降水タイプによって異なる時間変化を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度はコロナ禍のため、船舶への測器設置が遅れたが、今年度は順調に観測が行われ、「勢水丸」と「望星丸」の2隻では通年観測が実施できた。また、「みらい」では当初予定していた熱帯観測だけでなく、北太平洋横断及び北極海での観測も実施でき、幅広い大気状態の水蒸気量を観測することができた。さらには、「勢水丸」のドック作業中に「耕洋丸」にマイクロ波放射計・雲カメラ・GNSSを移設することで、日本海のJPCZやオホーツク海の海氷付近での観測も実施でき、日本沿岸冬季海上の貴重な水蒸気観測データを得ることができた。ひまわり8号からの可降水量推定モデル開発では、複数の機械学習手法を比較することで、より精度の高い推定手法のプロトタイプが作成できた。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍や世界情勢の悪化により、船舶からのGPSゾンデ観測に必要なヘリウムの入手が困難になり、GPSゾンデを用いた海上水蒸気観測とそれを用いた精度検証は難しくなりつつある。これまでのマイクロ波放射計・雲カメラ・GNSSとGPSゾンデ観測の同時観測データを活用することで、マイクロ波放射計及びひまわり8号による水蒸気量推定精度の向上を図る。2022年6月から7月には、東シナ海及び北海道沖で「勢水丸」、「新青丸」による集中観測を実施し、梅雨前線に流入する水蒸気を捉えることを試みる。この際には、ドローンや海上乱流フラックス計を用いた海上大気境界層観測も同時に実施し、海上水蒸気分布と海洋との関係の解析を進める。また、潮岬風力実験所でのマイクロ波放射計・雲カメラの2年間に渡る連続観測データを用いて、降水直前の水蒸気変化メカニズムを解析する。
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