研究課題/領域番号 |
20K01661
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07040:経済政策関連
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
松崎 大介 東洋大学, 経済学部, 教授 (00389610)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 個別消費課税政策 / 消費者物価水準 / 生産性の異なる複数財 / 消費課税政策 / 生産技術の異なる複数財 / 物価水準 / 課税政策 / 個別消費課税 / 貨幣経済 |
研究開始時の研究の概要 |
2019年における我が国の一般消費税率の引き上げに際し、一部の財に対し軽減税率が導入された。一般的な最適課税論の議論では、すべての財に同率の従価税を課す均一課税が望ましい。そのため、前述の政府による軽減税率への対応は、これに反するものと考える事ができる。一方、民間部門が流動性を溜め込むために有効需要不足が生じる状況下では、生産性の異なる複数財の相対価格に政策的な歪みを加えることを通じ、生産に必要な労働需要を増加させ、結果として有効需要が回復するという状況が想定し得る。本研究では、有効需要不足下の経済を想定した上で、一定額の税収を確保するための個別消費課税政策の性質について明らかにしたい。
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研究実績の概要 |
本研究では,複数の消費財が存在する長期的な経済停滞下での個別消費課税の影響について分析を行う。本年度は,構築した理論モデルを分析し,以下の4点の成果を得た。 (1)2財経済における生産について,各産業において労働投入に対して凹型の生産関数を考慮し分析を行った。結果として,homotheticな消費関数下における定常均衡における雇用量の変動が,生産関数が線形の場合と同じ方向に動くことがわかった。そのため,個別消費税率の引き上げがもたらす影響がよりクリアになる,線形の生産関数を使い分析を行うこととした。 (2)各財の労働1単位に対する生産力で表される生産性と,財1単位あたりどれだけ消費効用を増加させるのかという財の選好の関係が,定常均衡において,家計の実質総消費額に占める各財への割合を同じ方向に変化させることがわかった。 (3)各財の個別消費税による税収は家計に返すという制約の下では,2財の個別消費税率が同じ場合,不完全雇用の場合においての最小雇用量の近傍になることがわかった。これは,1労働あたりの生産性が最も高くなる状況であるためと考えられるが,この点についてはより慎重な分析を行うつもりである。この結果より,一定の税収を得るためにどのような個別消費税率が良いのかという問題については,2財のどちらかからのみ徴税することが雇用にとって良いという示唆を得た。 (4)失業のある貨幣経済下での2財モデルでは,数量が増えるような質改善の場合,1労働あたりの財の生産性が向上する場合と同様の状況が生じ,貨幣の限界効用に相対する財の限界効用が減少し,需要減を通じ雇用状況が悪化することがわかっていた。これに加え,新たに第n財を開発する,という新規開発モデルを構築し分析した結果,2財における数量が増えるような質改善の場合と同様の結果を得ることができた。この結果について,既存のDPの大幅改定の形で公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度までの研究においては,2020年より続くコロナ禍の影響により,若干研究計画に遅れが出ている。また,本研究の研究計画当初は,多財で構成される経済下で,その中の1財に着目し,その個数が時間を通じて一定となる状態を定常均衡と定義した上で,課税政策の分析を行うことを考えていた。しかし,税率を変化させる財以外の財を1つの合成財として扱いつつ,各財の個数をその生産に用いられた総労働投入量を使って示し定常状態を分析することが政策の含意を理解する上で有用であることがわかったため,計画を変更し分析をすすめている。また,2023年度の時点では,個別消費税率を2財のどちらかからのみ徴収することが,雇用の観点から望ましいという結果がモデルから示唆されているため,一定の税収を得るために異なる2財のどちらから課税すべきかについて分析を進めている。コロナ禍に加え,上記の問題を解決ため,進捗がやや遅れている状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では,課税対象の財と他財を集計した合成財の2財に着目し,資産選好のある貨幣経済下でのモデルを使って個別消費課税政策の効果について分析する。昨年までの研究で,消費関数をhomotheticな一般型とした上で,マクロ的な合成財と対応する消費者物価水準との関係を理論モデルで示すことができた。その上で,2財の個別消費税率が同じ場合,1労働あたりの生産性が最も高くなるため,不完全雇用の場合においての最小雇用量となり得ることがわかった。本年度の研究では,一定の税収を得るための課税政策として,個別消費税率を2財のどちらかから徴収することが雇用の観点から望ましいのか,に着目し分析を進めていきたい。
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