研究課題/領域番号 |
21K09532
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56040:産婦人科学関連
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
永瀬 智 山形大学, 医学部, 教授 (00292326)
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研究分担者 |
清野 学 山形大学, 医学部, 講師 (40594320)
太田 剛 山形大学, 医学部, 准教授 (50375341)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 卵巣癌 / 腹水 / 腹膜播種 / メタボローム解析 / 抗がん剤耐性 |
研究開始時の研究の概要 |
卵巣癌患者の腹水には免疫細胞、炎症細胞、中皮細胞などの細胞によりがんの微小環境が形成されている。この微小環境は、様々な細胞から分泌される代謝産物を介して相互作用を引き起こすといわれている。本研究は、メタボロームプロファイルにより卵巣癌の腹膜播種発症に関連する特徴的な代謝経路・代謝産物を明らかにすることを目的とする。明らかになった代謝経路・産物の代謝阻害剤あるいは代謝賦活剤により、腹水産生制御が可能かどうか臨床検体を用いた培養系や動物モデルで検証する。がんの微小環境の特徴をこれまでとは異なった代謝経路の面から解析する本研究の成果は、腹水産生制御などの新規治療開発へと発展する可能性を有する。
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研究実績の概要 |
卵巣癌と良性疾患患者(コントロール)の腹水メタボローム解析結果から癌腹水中ではキヌレニン(コントロール比5.8倍)、ウリジン(コントロール比4.4倍)、S-アデノシルメチオニン(コントロール比2.8倍)、アデノシン(コントロール比2.4倍)、リンゴ酸(コントロール比2.2倍)、オルニチン(コントロール比1.8倍)などが増加しており、アミノ酸代謝、ヌクレオチド代謝、TCA回路に関連したエネルギー代謝、尿素回路を含んだポリアミン代謝や様々な物資の細胞内外輸送に関連したABCトランスポーターなどの代謝経路が亢進していることが明らかになった。また、我々は同一症例の卵巣癌患者の腫瘍組織と正常組織を採取し、それぞれメタボローム解析を行ったところ、癌腹水中で産生が上昇していた代謝物は腫瘍組織中でも同様に増加しており、アミノ酸、ヌクレオチド、エネルギー代謝やポリアミン代謝経路の亢進が癌の進展に重要な代謝リプログラミング機構であることが明らかになった。特にアミノ酸代謝経路の変化はグルタミノリシスと言われ、がんのエネルギー代謝変化として重要であるため、その代謝物であるアミノ酸プロファイルが癌組織と癌腹水ではどのような違いがあるかについても検討した。腫瘍組織では、正常組織と比較してヒスチジン、ロイシン、メチオニン、キヌレニン、グルタミン酸、オルニチンなど多くのアミノ酸が正常組織と比較して有意に産生が上昇していた。一方、転移病巣を形成するうえでの培地として着目した腹水のメタボローム解析では、多くのアミノ酸がコントロールと比較して変化がなかったが、キヌレニンのみが有意に上昇していることが明らかになった。測定対象が腫瘍組織、腹水と異なるものの、遠隔転移能を獲得する上でアミノ酸プロファイルが変化し、特に腹水中でのキヌレニン産生の上昇が他臓器への転移病巣が形成に重要である可能性が示唆された。
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